目印だけじゃない! 航海の安全を守る「灯台」の大切な役割

  • はじめに
  • 灯台の技術的進化とその機能
  • 灯台の大切な役割は航海の安全
  • 灯台の文化的な意味とは
  • 海事から見る灯台の重要性
  • おわりに

 

はじめに

岬の先に凛とたたずむ灯台。夜の海を背景に発せられる光を眺めているだけで、何だか少しロマンチックな気分になってきますよね。でも、灯台はただ光を放つだけの存在ではなく、暗闇の中を航行する船舶を案内する道しるべでもあるのです。灯台の歴史は古く、記録に残る最古の灯台はなんと紀元前7世紀、古代エジプトのナイル河口の寺院の塔上に始まります。日本では839年に遣唐使船の目印として、九州各地の峰に建設されたと『続日本後紀』にあります。そして長い時間を経て、技術の進化とともに姿を変えてきました。筆者の故郷、鹿児島県では指宿市南部の海岸にある岬「長崎鼻」の灯台が有名です。薩摩半島の最南端にあり、岬と海原、周辺の山とが織り成す風景はたいへんに美しく、大学時代も何度となく訪れた鹿児島でも有数の景勝地です。今回は、そんな灯台の役割について見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■灯台の技術的進化とその機能

かつて灯台と言えば木造だったのですが、時間と共にコンクリートへと進化していきました。木材に頼ることは船や家などの建築には理想的だったのかもしれませんが、灯台には耐久性の面で少々不適合でした。そのため、頑丈で耐風性のあるコンクリートへと移行しました。また、灯台の光源においては、かつては何千もの蝋燭が鏡と組み合わさって船員たちに道を示していた歴史があります。時代が進むにつれて「明滅する灯火」へと進化し、きらきらと輝く灯火ではなく点滅する光源になっていきました。そこからフルネル式と呼ばれる大型レンズと光学技術の導入により、広大な海上を約40㎞先まで光の導きにより照らしてくれています。なお近年では、省エネ型の高光度発行ダイオード(LED)灯器に取り換えられている灯台もあるとされます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■灯台の大切な役割は航海の安全

航海の安全を守るため、雨の日も風の日も休みなく岬に立ち続ける灯台。海には浅瀬や暗しょうなどの危険な海域もあり、どこでも自由に走れるわけではありません。船舶がこのような危険物をさけて、安全に早く進行できるように、海にも陸上の道路に似た航路(船の通る道)があります。しかし、海の航路は陸路と違い目に見えるものではありません。そこで航海の安全をはかるには、海図という海の地図が必要になります。そして、自分の船が今海図上のどこにいるかを知ることで安全に航海することができるのです。この自分の船の位置を正しく知って安全に航海するための海の道しるべを「航路標識」と言い、中でも光で照らして確認できる標識を光波標識と呼びます。灯台はこの光波標識のひとつなのです。

 

灯台は見た目以上に高度な技術を取り入れており、その運営には多くの専門家たちが関わっています。例えば、遠く離れた場所にある灯台でも、GPSなどを使用して精密な場所情報を提供してくれるものもあります。また、遠方からでもわかるように強力な光源が設置され、離れた場所からでも船舶が位置を識別する目印となります。そのお陰で船舶が台風で遭難しそうになっても、悪天候で航海が困難になっても、灯台の光を頼りに安全な航行ができるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■灯台の文化的な意味とは

灯台は、船舶交通の安全を支える重要なインフラ施設であるばかりでなく、我が国の近代史を知る上で重要な文化遺産でもあります。事実、文化庁により文化財として指定されてあるものも多数あります。私たちは灯台観光を通じて、その文化的重要性を知ることもできるでしょう。実際に幕末に開国した日本が、諸外国との交易・交流を促進するにあたり、真っ先に整備したインフラ施設の一つが灯台でした。このように灯台は歴史的ランドマークとしての役割を果たし、地域コミュニティに貴重な経済的効果ももたらしてくれています。このように灯台はただの建造物ではなく、人々の心を通じて地域を照らす存在と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■海事から見る灯台の重要性

現代の航海技術は、衛星やデジタル化が進み、驚くほど進化していますが、それでも灯台の存在なくしては成り立ちません。莫大な航海データの海を航行する船にとって、灯台はなお、安全性を担保する役割を果たしています。海事代理士が所掌する16種に及ぶ海事関係の法律は、船に関するものや船員に関するものもありますが、船の利用に関するもの、港湾・航路のルールに関するもの、そして環境保全・災害の防止に関するものなどもあります。特に、港湾や航路のルールの整備はそのまま海の交通に直結するため、灯台の重要性は海上保安庁の航路標識の設置及び管理に関するガイドラインでも知られるところです。また、現代においては灯台の保全にも力が入れられています。私たちが持つ歴史や文化を未来の世代にも伝える先導者として、その働きは遺されていくでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわりに

私たちの周囲で目まぐるしく変化していくものがあるとしても、灯台の役割はまだ大切です。かつての使命とは違った意味での活躍が見られる今日、これからも灯台が果たすべき役割は多岐にわたるでしょう。新しい技術の導入や、環境に配慮したエコロジー対策が求められる現代においても、灯台は引き続き私たちの生活と密着しており、海との永遠の絆を象徴していると言えます。文化遺産としての灯台を大事に保ち、次の世代に渡してこそその歴史的価値は一層高まっていくと、私は考えます。

(和田直也)

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