漁船~市場「魚が食卓に並ぶまで」鮮度抜群の流通プロセス

 

  • はじめに
  • 魚の旅スタート:海からの収穫
  • 第一段階:水揚げと搬送
  • 第二段階:市場到着とオークション
  • 第三段階:最終目的地への配送
  • おわりに

 

はじめに

私たちがお寿司や刺身でいただくあのみずみずしい海の幸は、どのようにして皆のテーブルまで旅をしてくるのでしょうか。筆者の故郷・鹿児島県では枕崎のカツオが有名です。明治39年静岡県で富士丸という動力船が進水したのをきっかけに、鹿児島県内においても明治41年舞鶴丸が進水して動力船時代に入りました。動力船の導入により、これまで出ることのなかった100海里内漁場から500海里まで漁場が飛躍的に拡大しました。そして枕崎においては、原耕が大正14年から昭和初期にかけて、南方海域の漁場開拓を行い台湾・フィリピンまで漁場を開拓したとされています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カツオと聞くと、お刺身で頂くには少し生臭いイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、鹿児島枕崎の新鮮なカツオを口にすると、そのイメージがガラリと変わるかもしれません。特に、枕崎漁港に水揚げされたばかりの鮮魚や加工品を販売している「枕崎お魚センター」のランチで出てくるカツオは、「これがカツオ?」と思ってしまうほど、上品で旨味のある味わいです。かつおのわら焼きタタキも最高ですね! 威勢の良い掛け声が飛び交う魚市場では、新鮮なお魚を扱う直販所や、特上のかつお節などを取り扱っており、漁港枕崎ならではのお買い物が楽しめます。

さて、市場は産地直送の魚たちが私たちのお皿を彩る前に、一度集めて、値段がつけられるステージ。そこでは、新鮮な魚介が並び、大勢のバイヤーたちがその価値を競います。プロの目利きがしっかり見極め、凄い勢いで競りが行われているのです。魚が大好きな人にとって、そのプロセスはまさに目からウロコ。そこで今回は「魚市場がどんな役割を果たしているのか」を見てみましょう。

 

魚の旅スタート:海からの収穫

この魚の旅の起点は深海の底から始まります。そして、その魚たちを釣り上げるのが漁船。もちろん漁船には登録が必要です。漁船の登録自体は行政書士でも行うことができますが、船員法に基づく船員の就業規則作成などの業務は海事代理士の独占業務。海事代理士は海や船舶の法律に関わる仕事を取り扱う“海の法律家”なのです。小型船舶免許の更新なども業務範囲であるため、モータースポーツや釣りなどのマリンスポーツに関連する手続きも行っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、特に近年の漁船はデジタル化が進んでおり、釣り具の中でもハイテク機器に入るのが「GPS」と「魚群探知機」。これらを用いて魚のありかを探ります。GPS機能は、自船の位置・船速などを把握できるもの。魚群探知機は水深・海底地形・魚群の有無などを知る魚群探知機能を有するものです。

 

GPSは電波を受信

GPSは全世界的な位置測定システムで、地球上空を周回する複数の人工衛星から発射される電波を直接受信し、自船位置を割り出す仕組みです。言わばカーナビの海版と言えるでしょう。

 

魚群探知機は超音波を発信・受信

魚群探知機は超音波を利用することで、水深・海底地形・魚群の有無などを把握できる仕組みです。エコーの原理と同様で、音波が物体にぶつかって反射し、その音波の一部が発射したところまで返ってくるというもので、魚群探知機はこの音波の反射原理を利用しています。

 

第一段階:水揚げと搬送

早朝、私たちがまだ布団の中でウトウトしているとき、漁師さんたちはすでに一日を始めています。そして魚群探知で魚を見つけると網を用いて水揚げをします。水揚げされる魚種は、サバ、マイワシ、サンマといった多獲性魚のほかに、カツオ、マグロなどの回遊魚、キンメダイやヒラメ、カレイなどの底魚など約200種類に及ぶ近海の魚介類が水揚げされるのだとか。そしてその魚は、活魚・鮮魚・冷凍・冷蔵などの状態で出荷されます。主に冷凍技術によって魚たちは新鮮さを保たれ、次のステップへと進むのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二段階:市場到着とオーション

さて、魚たちが無事に舞台裏の役者たちによって仮の宿を得た後に繰り広げられるのが、市場でのアクション満載のオークション劇です。早朝から鮮度を競うために集まった、硬派な表情の仕入れ師たち。ちょっとした視線のやり取り、微妙な手の動き一つで価格が決まるなんて、まるで心理戦ですよね。しかし、こんな緊張感あふれる空間の中でも、彼らの目は確かなものを求めています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

産地市場は全国に313カ所、 消費地市場は278カ所あり、セリや入札の市況がすべて公表されるため、 取引する際の海産物の参考になる価格(最高値)が判断でき、公正な取引の指標にもなっています。そして、セリや入札、相対(あいたい)の方法によって根がつけられていきます。セリはでその場で一番高い値をつけた人が競り落とせる販売方法。古くからの慣習で、指で数字を示す「手やり」が多く使われています。入札は買受人が欲しい量と値段を書いた紙をセリ人に渡し、高い価格をつけた人が購入できる一発勝負の販売方法。相対は、卸売業者と買い手が販売価格や数量について交渉して販売できる方法です。

 

第三段階:最終目的地への配送

海から取られ、市場で運ばれ、そして、最終的に私たちの皿へと旅立っていく過程は、まるで魚の旅路のようなもの。水揚げされた後の適切な冷却技術と、正しい運送方法、そして何よりも確かな経験と知識を持つ職人さんの手によって、新鮮さが続き、味わい深い魚介類が私たちの食卓に上がってきます。この一連の流れで魚の品質がいかに維持されるかがポイント。魚の保存期間は、保存する場所によって異なります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷蔵室で切り身を保存した場合の賞味期限は4日〜5日、冷凍室での賞味期限は4週間とされています。冷凍室で魚を保存すると、4週間ほど賞味期限を伸ばすことができます。しかし、家庭用の冷凍室は庫内の温度を一定に保つことが難しいため、家庭で冷凍した魚の賞味期限は2週間程度と考えてください。

 

おわりに

私たちが楽しみにしているお刺身やお寿司が目の前に現れるまでには、実は一筋縄ではいかない大冒険が繰り広げられていたのです。なんてことのない日常の食事でも、実はこんなにも労力と知識が奥深く繋がっているため、私たちが日頃口にしている食事全てが一つの小さな奇跡じゃないかと感じてしまいますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもお皿に盛られた新鮮な刺身を見たら、その一片一片がどれほどの情熱と労力によって生まれたのかを考えてみると、きっと美味しさもひとしおでしょう。ぜひ鹿児島・枕崎のカツオも、一度ご賞味くださいね!

(和田直也)

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