- はじめに：海の響き「潮汐」とは何か
- 海のリズム「満潮」と「干潮」とは
- 潮汐の驚異的なメカニズム
- 大潮と小潮 ～異なる潮汐パターン～
- 潮汐がもたらす自然と人間活動への影響
- 潮汐情報を知ることと安全な運航
- おわりに：海の満ち引きがもたらす恵みと海上運送
はじめに：海の響き「潮汐」とは何か
海が奏でるダイナミックな波の音は、潮の流れが関係しています。それは「満潮」と「干潮」という自然の摂理によるもの。実はこの大自然のリズムは、数百万年も前から地球の自転と、月と太陽の引力によってゆっくりと創造され続けている神秘的な現象なのです。実は、鹿児島県にはそんな満潮と干潮の潮汐を楽しめる場所があります。
それが日本一長い砂丘であり、日本の渚百選に認定された壮大な景観である「吹上浜」。日本三大砂丘の一つで、北はいちき串木野市から日置市、南さつま市まで47km続く日本一長い砂丘です。東シナ海に面し、南さつま市の海岸線の北半分は吹上浜になっています。毎年5月には、近くの会場で「吹上浜砂の祭典」が開催され、県内外から訪れる来場者の目を楽しませています。そこで今回は、神秘的な海の「潮汐（ちょうせき）」についてご紹介いたします。
■海のリズム「満潮」と「干潮」とは
海岸に立ったときに潮が満ちて海水面が上がりきった時、あなたはきっと「満潮」と直面しています。正確に言うと、満潮とは一日の中で2度、海面が最も高くなるタイミングのことを指します。一方で、海を見て「あれ？海水がいつもより引いて砂浜が見えているな」と感じたことはありますか。それこそが「干潮」です。満潮とは対照的に、海面が最も低くなる2度のタイミングを指します。このように一日中、海は寄せては返す潮の満ち引きを繰り返しているのです。そしてこの「潮汐」が海の生物に影響を与えています。
■潮汐の驚異的なメカニズム
満潮と干潮を生み出すメカニズムは、地球の衛星である“月”あってのこと。まず、月の影響からみてみましょう。月には「引力」があり、その作用が海を引き寄せて満潮を生み出します。 そこに加えて「遠心力」の力も忘れてはいけません。遠心力は物体から回転の中心をみた方向と逆に作用する力です。それゆえ、地球の表面で太陽に最も近い部分では、地球の内側に向かって遠心力が働きます。そして、地球の反対側の海水を押し出します。この二つの力が組み合わさり、海の満潮と干潮を生み出すとされています。
■大潮と小潮 ～異なる潮汐パターン～
海を見ていると、満潮と干潮の差が大きいことに気づくかもしれません。実はそこには大潮と小潮が関係していると言えます。「大潮」は月と太陽が直線に並んでいるために起こる現象。潮位差が最大限まで広がり、潮流が活発になる現象です。夏休みなどに家族が潮干狩りを楽しんだりするのが、まさにこのタイミングです。一方で「小潮」とは、月と太陽が直角方向にずれ、満潮と干潮の差が最小限になるとき。海が穏やかになるため、のんびりとシーライフを楽しむチャンスだと言えます。筆者も、よく夏に鹿児島にある吹上浜で家族と過ごしました。
■潮汐がもたらす自然と人間活動への影響
潮汐は、自然環境にも人間活動にもさまざまな影響を与えます。潮汐により海洋生物の食事と活動時間が決まってきます。また、月の引力や満ち欠けは摂食、コミュニケーション、産卵などの行動に周期的な効果を及ぼすとされます。一方で、人間活動に対する影響も見逃せません。潮汐のテーブルで満潮と干潮を確認し、最適な海水浴の時間を選んだり、沖釣りなどのタイミングをはかることも可能です。
■潮汐情報を知ることと安全な運航
私たちは常に情報化社会に生きていますが、その中でも潮汐情報はどのように取得できるのでしょうか。最近はデジタルリソースを用いて潮汐情報を確認することが可能です。ウェブサイトやモバイルアプリは、満潮まであとどれくらいの時間があるか、または干潮が起こるかを常に知らせてくれます。一方で、物理的なリソースも忘れてはなりません。日本全国の入江、海岸、あるいは漁業協同組合で利用できる“潮汐表”でもチェックすることができます。
そして、海を安全に運行するには、この潮汐表から潮の流れを読み航海するという技術が必要になってきます。海は刻々と流れが変わり、穏やかさや激しさなど表情を変えていきます。特に、海の上での運送ともなると、その安全には万全の注意をしなければなりません。旅客や貨物の輸送における安全の確保は、運輸事業の根幹を成すものです。海事代理士は、これら運行管理に関しても運輸安全マネジメントの支援を行っております。
おわりに：海の満ち引きがもたらすものと海上運送
海の満ち引きは、我々の日常生活の貴重な側面を作り出していると言えます。干潮と満潮のリズムは海に住まう生き物だけでなく、私たちの生活に大きな恵みももたらしてくれます。それと同時に、潮の流れにより海の表情は常に変わっていくものです。特に海上運送など海の流通においては、何よりも安全が第一。しっかりと管理した上で旅客や貨物を運ぶことが求められます。海の潮汐について知りその不思議なリズムを読むことは、海と共に生きることであるとも言えるのです。
（和田直也）
