海とフネのトリビア(4)

こんにちは カトウです。

前回のトリビア【頭の体操】の答えは「1億分の1秒」です。

GPS衛星から発射され地表に達する電波信号の速さは秒速30万キロメートル(3億メートル)です。

つまり地表での位置誤差を3メートル以内に収めるには、信号の時間誤差を1億分の1秒以下に保たなくてはならないことになります。

 

さて、これまで3回はちょっと堅い話が続いたので、今回は一休みして肩の凝らないお話です。

 

今ほど船も航海術も発達していない帆船時代の昔、ヨーロッパの国々を出て中緯度、低緯度の順風に恵まれて北大西洋を南下してきた船が赤道無風帯を超えて南半球に入るというのはそれだけでたいそう難儀なことだったので、赤道通過時には船の上で無事の通過を感謝し航海の無事を願う儀式やお祭りやが行われるようになったようです。赤道を越えた経験がある船乗りはベテランとして一目置かれる存在だった一方で、初めての者に対しては儀式や祭事が変じてある種の通過儀礼が行われる(強いられる?)ようになったことは、保守的で経験がものをいう船乗りの世界では当然のなりゆきだったでしょう。

以前、赤道に赤い帯が巻かれているというお話をしましたが、日本の海上防衛組織でも遊び心のある艦長のフネでは、まさに赤道を通過しようというそのときに「前方500ヤードに赤道が見える!」などと拡声器を通じて艦内に放送します。赤道を越えるのが初めての新米乗組員はこれを聴いて見逃してはならじと上甲板に飛び出して「どこどこ?」と先輩に訊ねては失笑をかうという嘘とも真ともつかぬお話もあります。

そこで「赤道祭」。以前のように航海そのものが冒険であった時代はともかく、強力な推進機関と正確無比の航法機器をもって世界の海洋のどこであろうと自由に走り回る現代のフネではどうでしょうか。私が我が国海上防衛組織の現役だった20年ほど前はまだその伝統が残っていて、アラビア海での重大任務に向かう途上でも赤道祭が行われていました。その内容はどこのフネも同じで、何故か鬼の扮装をした「赤道神」から授けられた鍵をもって艦長が赤道門を開けるというもの。日本の他の祭祀の例に漏れず神事なので神官も登場しますがもちろんキャストは乗組員で、巫女さんも髭の剃り跡青い男たちの仮装です。女性乗組員が増えた最近の情勢はわかりませんが、神事に続いては、どこの世界にもいる女装好きの乗組員や、若くて可愛い乗組員に本人の意思にかかわらず女装をさせて寸劇など行うという、男社会で伝わってきた一種のリクリエーションです(ハラスメントはありません)。艦内飲酒の制限が今ほど厳格でなく、本邦を離れて数カ月というような長い行動では週に一回程度の飲酒の機会が許されていた時代には、赤道祭でも飲酒が許され楽しい余暇を過ごしたものです。

一方で、新人の通過儀礼として、我が国海上防衛組織でも洋上に船を停めて上甲板から海に飛び込ませる総員離艦の訓練とも度胸試しともつかぬことを行ったりもしていました。手荒な欧米の海軍では通過儀礼が嵩じて新人に対する様々のシゴキが行われたこともあったようです。

 

【クイズ】「七つの海を股にかけて…」などと言うときの「七つの海」とはどの海をいうのでしょう?

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